no.1 | 産まれたことを

三井朝日
(形式 | テキスト)

少し時間が経った頃、産まれたことを朧げに気づき始めた年代の僕、分かりやすく言うならば、手足が生え始めて、拙くも動かし始められるようになった年代の僕、は母さんに〈もしかして僕は産まれたのかな〉と尋ねて、母さんに笑いながら頷かれたとき母さんの喜びという感情に触れて、安心しつつも、〈これが産まれることか〉と、肩透かしというか、期待はずれというか、漠然と腑に落ちなさを感じた。知っているけど煤けたもののような、懐かしくも執着までいかないもののような、おかしな話だけれど、そういう感覚だった。だけど妹のきらきら光る睫毛の動きを見ると、僕にも喜びという感情が緩やかに、かたちづくられていくのを感じた。

Drops

小林春菜
(形式 | 写真、動画)

6月に、甥が生まれた。この子をどうやって愛せばいいだろうか、と思った。
周りからの期待や愛情は、子供の私にとって甘く、苦しく、溺れてしまいそうで、近づくことを恐ろしく感じていた。それでも、愛おしく思ってしまう存在ができた。
だから、今まで受け取ってきた愛情をアメに託して、飲み干そうと思った。そうやって、向き合おうと思った。
飲み込めずに残ったアメは、不思議なくらいに綺麗だった。


作品リスト

音声での上演 |
坂本彩音(形式 : 音声) >>>

’97 06 05 |
小林克彰(形式 : 写真) >>>

Drops |
小林春菜(形式 : 写真・動画) >>>

cycle |
首藤なずな(形式 : 音) >>>

はじめに >>>


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意見交換会


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