no.1 | 産まれたことを

三井朝日
(形式 | テキスト)

少し時間が経った頃、産まれたことを朧げに気づき始めた年代の僕、分かりやすく言うならば、手足が生え始めて、拙くも動かし始められるようになった年代の僕、は母さんに〈もしかして僕は産まれたのかな〉と尋ねて、母さんに笑いながら頷かれたとき母さんの喜びという感情に触れて、安心しつつも、〈これが産まれることか〉と、肩透かしというか、期待はずれというか、漠然と腑に落ちなさを感じた。知っているけど煤けたもののような、懐かしくも執着までいかないもののような、おかしな話だけれど、そういう感覚だった。だけど妹のきらきら光る睫毛の動きを見ると、僕にも喜びという感情が緩やかに、かたちづくられていくのを感じた。

cycle

首藤なずな
(形式 | 音)
(洗濯機 | AW-6G3)
(アコースティックギター | 真嶋 伸二)
(ピアノ | 首藤 なずな)

この間洗濯物を干しながら、そういえば死ぬんだったな、と不意に思い出した。そういう瞬間がたまにある。明確な事など何一つないような世界なのに、いつか死ななくてはいけない、そういう約束を誰かとして、ここにいる。そういうサイクルの中で、明日のために洗濯機を回している。


作品リスト

音声での上演 |
坂本彩音(形式 : 音声) >>>

’97 06 05 |
小林克彰(形式 : 写真) >>>

Drops |
小林春菜(形式 : 写真・動画) >>>

cycle |
首藤なずな(形式 : 音) >>>

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